かまへて、ダンパンしたまへ」
 それから、ドタバタ、店中をひつかきまはして紙を全部つみこんで、ヤアとも言はず立ち去る気配だから、
「オットット、お待ち下さい。いつたい木田さんは警察にあげられてゐるのですか」
「別に警察にあげられやせんよ。なぜ?」
「なぜつて、ぢやア、あなた方、なぜ私の買つた紙を持ち去るのですか」
「だから君も、わけが分らない男だな。闇の紙をシコタマ買ひこむ狸のくせに、いゝ加減にしろ。さつきから言つてるぢやないか。この紙は売つたり買つたり出来ない性質の紙なんだ。あの野郎、人の目をチョロまかして持ちだしやがつて、だから君はあの野郎とダンパンすりやいゝんだ。どうせヤミスケの動かす紙は曰くづきにきまつてらアな。それぐらゐのこと、君も覚悟がなくちやア、だらしのない男ぢやないか」
 叱りとばされ、目玉を白黒するまもなく、トラックは角をまがつて消えてしまふ。皆目わけが分らない。
 するとその日の暮方になつて木田市郎がタクシーでのりつけて、
「どうも、あなた、すみません。実にどうも、とんでもない手落ちで。なに、あなた、あれでどこへ売つちまつたか売先が分らなきや、話はそれなりになつたんですよ。万事ヤミの品物はたいがいそんな物でして、あいにく、あなた、運転手に鼻薬がなかつたもんで、そこからバレちやつたのですよ。まつたく一代の失策です。いえ、必ず、紙は又、おとゞけします。いえ、紙ぐらゐ、どこにでも、何方連、山とありますから、そのうち、ちよいと、又、トラックで横づけに致しますから。それでは今日は急ぎますから、いづれ三日ほどあとに、いえ、お詫びにくるわけぢやありません、現物をつみこんで横づけに致しますから。どうも、本日は、すみません。では」
 待たしておいた車で、風の如くに消え去つてしまつた。お金を返してくれといふヒマなどは全然ない。サギだか過失だか、見当をつける余地がないから、万感胸につまり、アレヨと見るまに取り残された自分の姿があるばかり。
「ラツワンだね、マスターは。紙の山がもう消えちやつたワヨ。気にかゝるワヨ、百四十四万円すると、マスター二百万ですか。アタクシは二十個のピースがまだ昨日から売れ残つてをりますんで、ヘエ」
「昼間は当分店をしめるからチンピラ共はどこかで遊んでゐろ」
 パンパンやチンピラをしめだして鍵をかけて、たゞ一人、黙々とウヰスキーを飲んでゐる。三日
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