コだけれど、坐つてゐれば分らないやうなものだが、坐つてゐてもビッコのやうな坐り方で、ヤブニラミだけれど、これも目を閉ぢてゐるから分らないやうなものだが、目を閉ぢてゐても両の目の大きさが違ひ、一つは一の字、一つはへの字の形をしてゐる。獅子鼻の下に、出ッ歯の口をあけて、その歯の汚らしいこと。神様になつても、髪の毛をモヂャ/\たらしてゐる。深刻めいたところが全然なく、無智無能、たゞポカンと目を閉ぢてゐるだけで、二分ぐらゐで、目をとぢたまゝ、
「いやになつちやうね」
と、すこし、首をふつた。
「いやになつちやうね」
又、しばらくして、
「いやになつちやうよ」
「何が?」
「バカは死なゝきや治らないよ。お前はバカだらう」
「さうかも知れないね」
「お前はもう、いゝ。お下り。ムダだよ」
「何がムダなんだい」
「バカは仕方がないよ」
「バカか。バカがお前さんよりもお金をもうけてゐるか」
「女に飢えてるよ。アハヽ。いけすかないバカだ。助平バカ」
「お前も男に飢えてるだらう」
最上清人は立上つて、ノッソリ伺ひの間へ戻つてくる。別のお客と対座してゐた仙境の人が、最上を目でまねいて、
「あなた、ちよッと」
「もう、いゝよ、分つたよ」
「ちよッと、手相を」
今度は天眼鏡で、つぶさに見究はめて、
「下の下だ。仕方がないんだなア。あなた、お告げに見捨てられたのは、あなた御一人ですよ。さうなる以外に仕方がない。あなた、然し、どうでせう。養神道の道理に就て、すこし、心をみがゝれては。私が手ほどき致しますが、養神様からも毎日一言二言おさとしがある筈です。このまゝぢやア、あんまり、お気の毒です」
「養命保身かい?」
「それもあります。一言にして云へば、クスリ、すべてを治す、ですから、クスリ、養神様はあなたを見捨てたけれど、あなた、見捨てられちや、いけません。もう一度伺つてごらんなさい。伺ひなさい。あなたに伺ふ心が起れば、見捨てられない証拠です。伺ひますか。いかゞですか」
「ふん」
清人はひやかしてやる気持になつた。それで、ふらりと、再び養神様の前に立つ。
「お坐り」
清人はあぐらをかく。
「よい子になつた。今にだんだん坐るやうになるよ。今日はお帰り。又、おいで。信心のはじまりは、そんなものだよ。叱りはせん」
清人は外へでゝ背延びをしたが、養神様はほんとに何か通力があるのかも知れないとい
前へ
次へ
全82ページ中64ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング