ン。そうか」
光也は改めて考えた。
早くそれを云ってくれれば、こんなに苦労はしなかったなと彼は思った。彼は一年間考えて、それから返事をするつもりだった。しかし、だいたいに於て結婚を拒否する意向に定まっていたが、そのために、あの拝殿で胸にだきしめていた希望が、それでみんなメチャメチャになることを考えると、いきなり拒否する勇気がわき起らなくなるのであった。
「これでよかった」
と彼は思った。娘が死んだら、いっぺんくらい墓参に行ってみてもいいなあと考えた。
「このキャラメルを食うと、今度こそアイツを抜くことができるかも知れないな」
競技会の前日までしまっておこうかと考えたが、バスが終点までつかないうちに、みんな平らげてしまっていた。
こうして彼はまた校門をくぐったのである。
底本:「坂口安吾全集 13」筑摩書房
1999(平成11)年2月20日初版第1刷発行
底本の親本:「文藝春秋 第三一巻第五号」
1953(昭和28)年4月1日発行
初出:「文藝春秋 第三一巻第五号」
1953(昭和28)年4月1日発行
入力:tatsuki
校正:noriko saito
2010年5月19日作成
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