が、ぼくはその方面の先生の生活にタッチしたことはありません」
「放二さんはオバカサンね。先輩に接触したら、裏面の生活を見る方が勉強になるわ」
「ぼくは反対だと思うのです」
「どうして?」
「遊ぶときは、誰でも、同じぐらい利巧で、同じぐらいバカだと思うのです」
「マジメの時は?」
「ぼくは、まだ、人生で何が尊いものだか、わからないのです」
「せいぜい、長生きなさい」
 せつ子はバカらしくなったが、気持を変えて、
「大庭先生は短気の方?」
「いいえ。むしろ、寛大です」
「しかし、皮肉家ね」
「いいえ。いたわりの心が特に先生の長所だと思います」
「私のこと、どんな風に考えてらッしゃるらしいの?」
「今のところ白紙だろうと思いますが」
 放二は考えて、
「ありのままのあなたは、先生の一番近い距離にいる女の方だと思うのですが」
「一番近い距離って、なんのこと」
「魂のふれあう位置です」
 別れて去ろうとすると、放二がよびとめた。
「小さな反撥や身構えはいけないと思います。ほんとうの奥底に通じあう道をはばみます」
「なんのこと?」
 せつ子の目が光った。名刺の件を知っているのかと思ったのだ。せつ子
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