女の魅力というものは、恋愛のような初歩的なものではないし、女の生きがいも、そのように初歩的なものではない。
 せつ子は二人の小鹿に、慈母のようなやさしい眼差しをおくって、
「私はね。たとえば、大庭長平全集を計画するでしょう。こうときめたら、コンリンザイ、しりぞかないわ。賭というものはね、たいがい損するときまったものですよ。でも、誰かしら、賭に勝ってる人がいるのよ。きわめて限られた少数の人だけがね。算数的には、やらない方が無難なものよ。無難といえば、サラリーマンの生活にかぎるわね。事業というものは、賭なんです。こうときめたら、おりてはダメよ。算数的には不可能きわまるものなんです。それを承知でやりぬくのが、賭というものです。一か八かじゃないのね。いつも、一。最後の時まで、一にはったら、一だけ」
 大庭長平全集ぐらい、あなた方がダメだと思っても、私はやってみせる。恋愛はふられた以上ひきさがらなくてはならないが、事業にふられることはない。こっちが、おりさえしなければ。土足にかけられ、ふみにじられても、最後にモノにすれば勝つのである。
 せつ子の慈母の眼差しには、そんな決意は毛筋ほどもうかがえな
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