れても、お前さん方若い者に」
 二人がマルセイユへはいったのを見とどけると、青木は三十分、店の傍に見張っていた。大庭長平が先にきているはずはない。おくれて来ると見てとって、待ちかまえていたのである。これが失敗のもと。二人のあとからすぐはいれば、せつ子の姿を認めることができたかも知れなかった。
 三十分待ってもこないので、扉を排して、はいる。敬々《うやうや》しく近づくボーイに目もくれず、まずサロンをゆっくり見廻したが、二人の姿も、長平の姿も見えない。スペシャル・ルームにひッこんでいるのだ。
「小説家の大庭長平さんのお部屋へ案内していただきたい」
「大庭さんとおッしゃる方ですか」
「そう。五十がらみのデップリした西郷さんのような大男だよ」
「ちょッと分りかねますが」
「三人づれだよ。はじめ西郷さんが待ってるところへ、美青年と美少女がアベックで訪ねてきたはずさ。しらべてみたまえ」
 ボーイは他の数人の同僚たちに訊いてまわったのち、
「大庭さんとおッしゃるお客様は本日はお見えになっておりません」
 インギン丁重である。さてはボーイにいたるまで堅く口どめに及んでいるのかと、青木は察しがよすぎて、
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