「オレとおんなじだなア」
「ダメですよ。こちら側へお座んなさいね。ききわけがなくッちゃ、いけないのよ。私のお酌で、お酒めしあがれ」
 箱根まで迎えにきたカバン持ちが気をきかせて、ウイスキーをとりだす。
 宇賀神は素直に座席をかえて、キゲンよくウイスキーをなめている。気まぐれな思いつきを言いたてるが、実際は言いたてるのが面白いだけで、やる気はない。神経は鋭利で、見かけと反対に、こまかく気のまわる男だから、無意味なツキアイは神経が疲れるばかりで、退屈しのぎにはならないのである。
 宇賀神はウイスキーはちょッとでやめて、すぐ居眠りをはじめた。
 午後四時に東京駅へつく。宇賀神は迎えの車でいずれへか立ち去り、せつ子も車をひろって、銀座の社へ六日ぶりに戻った。
 せつ子が箱根へ行ったのと前後して、大庭長平が上京している。長平の出版は某社に独占されているが、せつ子は新しく自分がやるはずの出版社で、この出版権をそッくり握ってしまいたいのである。
 速達で云ってあるから、せつ子の社で放二が待っているはずだ。先に河内が帰っているから、社内にはすでに噂がとんでるだろうが、せつ子はハラをきめたから、平静を失
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