いることがイノチのようなこの古都へきて、過去を忘れた気持になれるなんて、フシギなものだ、と記代子は思った。覇気のない古い都。乙女心には、灰色の街のように魅力のない土地であったが、今はただ生き生きと明るい。新鮮だ。
そして、青木に対しても、その親切に感謝する素直な気持が生れていた。彼女は家路を走る自動車の中で青木に云った。
「京都はすばらしいわ。もう東京へ行きたいと思わないわ」
ウットリと甘い夢を見ているようだ。青木は夜気が一そう身にしむような膚寒い思いがした。肚の中で、こまった子供だと舌打ちした。
「京都は落付いた町ですよ。しかし」
「しかし、なによ」
「京都に甘えてもいけないし、東京を怖れてもいけませんや。そして……」
青木は悲しくなった。自分だって、記代子と同じことじゃないか。五十にもなって。
「そして、私は生れ変ったと思うのよ」
記代子の独語は生き生きとしていた。
十二
翌朝、新たな第一日の目ざめをむかえても、記代子の胸のふくらみはつづいていた。冷静な考え方も、かなりチミツな計算力もとりもどしたが、希望の明るさを消す力にはならなかった。むろん、いろいろ
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