は、今となっても、理によってあたたかく生れ変って感ぜられる底の底のものではなかった。理窟だけでは納得できない性質のものである。
「君の云うことは、ツジツマが合いすぎて、気味が悪いね。そうツジツマが合いすぎちゃア、いけねえな」
「なに、ツジツマが合うもんかよ。大要をつかんで、要領だけを云ってるんだよ。要所要所は、いつもツジツマの合ったものさ。枝葉末節に至ると、必ずツジツマが合わなくなるのさ。人生は大方枝葉末節で暮しているから、万事ツジツマが合わねえや。こりゃア、仕方がないじゃないか」
「そういうもんかね。しかし、要所要所に於て、君は大そうあたたかいようだが、実はひどく冷めたいのも、枝葉末節のせいかね」
「そうだろう」
「なア、長さんや。思うに、君も水ムシだね。むしろ、君こそ水ムシの張本人だね。生涯人をむしばんで痛くもカユくもねえや。実に酷薄ムザンですよ。最も酷薄なるものは、痛くもカユくもないものだ。それは、君に於て、まさに最も適切だね」
 長平はてんでとりあわなかった。それは全く水ムシと同じ呪わしいものに見えたが、水ムシに悩む自分の方を考えると、青木はクサらざるを得なかった。

    
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