エンゼルを忘れようと思っていた。それはエンゼルを悪党と断定した意味でもないし、エンゼルを愛せなくなったという意味でもない。理論や感情を超えた一ツの気配がわかるからだ。エンゼルが自分を愛していないという気配、いくらエンゼルを思ってもムダだという気配がわかるからである。
記代子が経験から得た結論はそれだけであった。彼女の考えも感情も、そこに突き当って、引き返す。つまり、その壁にぶつかって、新しく出発するのである。
そして、壁にぶつかって引き返してきた新しい感情は、青木か、あるいは、そのほかの新しい何か、そう考えがちであった。それは逞しく、強い考えではない。ややヤケ気味の、絶望的なものでもあった。
しかし、絶望的な考え方は、むしろ地道なものであった。彼女は時々空想的なことを考えた。人に使われる身から離れて、独立した職業についてみたい、という考えだ。会社員とか、ダンサーとかいうのではなく、自分がその店の主人公、というような空想であった。そのへんまでは、まだ地道かも知れなかったが、すると記代子はその次にこう考えている。お金持になりたい。そして、誰に気兼もなく、自由奔放に生きたい。
その空
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