だということを、全然忘れているのである。
 記代子の背に青木の影が重なっているだけでもイヤだったのに、エンゼルの影も重なっている。動物臭がプンプン匂っている。それはみんなバカのせいだ。
「あなた、今になって気がついたのは、そんなことなの? そのほかに、気づかなければならないことが、ないのかしら?」
「でも、憎んでらッしゃるでしょう。それに答えてよ」
「さア。憎んでいますか。あなたが憎まれてるンじゃないでしょうか」
「おんなじことよ」
「あなたの場合、憎まれているか、いないか、そんなことを考えるのが問題ではないのよ。人々に憎まれる原因について、考えなければならないのよ。あなたも散々苦労なさッたでしょう。そのアゲク、私に憎まれているか、いないか、ようやくそんなことだけ気がつくようになったとしたら、ずいぶん悲しいじゃありませんか。人々はあなたに期待しています。あの大きな試錬の中から、あなたが何をつかみとってきたでしょうか、と。あなたの場合、私という存在は、とるにも足らぬ問題よ。あなたは男性というものに、どんな新しい考えを、つけ加えるようになりましたか。青木さんについて、エンゼルについて、あな
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