たり、と思うよ。もっとも、あんたは、老いて益々若い気持かも知れないがね」
自ら小女にビールを命じ、自分で栓をぬき、二つのコップについで、グッと一息にのみほした。
「ヤア、うまい。これが、人生だ。なア、長さん。人生は、たった、これだけのもんだよ。オレが、三四ヶ月前に東京でようやく君をとッつかまえた時にさ、別れぎわに、こう言ったのを覚えているかい。そのうち、一度、京都へ訪ねて行くぜ。なんのためだかオレも知らないけどさ、そのときは、門前払いはカンベンしておくれよな、と言ったのさ。人間は自ら予言するものさ。いや、結局、自分の予感だけの人生しか生きることができないのだな。しかし、そんなことは、どうだっていゝんだ。こうやって、ビールをのむだろう。すると、ほかのことなんか、実にとるにも足らないことになってしまうのさ。なア、キミ。ぼくは、いま、一つのことを悟ったのさ。曰く、老境ですよ。老いて、益々迷い深し。しかし、老境は老境ですよ」
青木はしばらくビールをたのしんでから、ようやく記代子のことを思いだして、ひどい姿でどこからか彼のもとへ逃がれてきて、目下入院中だということを語った。
「ゆうべ、おそく
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