い。自分にできることは、自分の心だけであり、自分の善意を心棒として、それに全的に頼る以外に法はないと考えた。
「わかりました。では、ぼくの目に映じたありのままを帰って報告いたします。そして、その結果、こちらへ御報告すべきことがありましたら、また、参上させていただきます」
エンゼルは安堵と感謝を端的にあらわした。
「あなたという人を得たことは、ぼくらには千万の味方にまさるよろこびですよ。記代子のために、力になってあげて下さい」
放二はうなずいた。そして、立上って、記代子に言った。
「下宿の荷物をこちらへ運びましょうか。さしあたって、必要なものがありましたら、なんなりと命じて下さい」
「ええ、こんどいらッしゃる時までに、必要なものを書きだしとくわ」
淋しそうなカゲはなかった。もう、ここの人になりきって、いるようであった。
裏と表
一
放二はせつ子に報告した。
予想していたことにくらべて、あまり意外千万なので、せつ子はいぶかしそうに、
「そう……」
と答えただけで、ほかに言うべき言葉すらないようであった。
せつ子は長平の宿に電話して訪問をつげ
前へ
次へ
全397ページ中246ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング