自信がないから、腹も立たないタチで、痛さをのぞけば、蠅がとまったぐらいにしか考えていなかった。
六
ルミ子がボンヤリしていると、もう七ツ八ツ、おまけにひっぱたかれた。
ほかの女なら、口惜しまぎれに何とか言いたくなるところだが、ルミ子は睨みつけもしなかった。手応えがなさすぎるせいか、又、三ツ四ツ、おまけをもらった。
キッピイは凄んだタンカで睨みをきかせるヒマがなく、ひっぱたくだけひっぱたいて、手が痛くなってしまった。
ルミ子がコック場で顔をなおして戻ってくると、キッピイは帰り仕度して出てしまったあとだった。
「ポン中よ」
一人が教えてくれた。ヒロポンの話はきいていたが、ルミ子の周囲には愛用者がいなかったので、ポン中毒の正体がのみこめなかった。
「それで、凶暴なの?」
「そうでもないよ。根がヤキモチヤキなのよ。ルミちゃんが可愛いい顔してるから、癪にさわるのよ」
その言葉が気に入らなかったと見えて、ちょッと可愛い大柄な女が訂正した。
「エンゼルに女ができたから、ヒステリーなのさ。その女ッてのが、キッピイの学校友だちじゃないの。ここへ遊びにきたじゃないの。あの子さ
前へ
次へ
全397ページ中223ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング