並べたくなるもんですなア。こうして、入り口へ腰かけますとね。昔、やったことがあるような気持になるから、妙なものですよ」
先方がタニシのように口をあける見込みがないのを見てとって、青木は益々、ふざけた気持になった。
「さて、鉛筆の代りに、とりいだします品物は、ハッハ」
青木は主婦を見つめた。
「記代子さんは、金曜日に、どんな服装で、でましたか?」
主婦は意表をつかれた。青木にしてみれば当然な質問だったが、主婦はこれまでに放二から様々の質問をうけて、しかし、この質問はうけなかったからである。
「それを、きいて、どうなさるのです」
敵意がこもったので、青木は嘲笑で応じた。
「人相書をまわすんですよ。探ね人。家出娘。二十歳」
「大庭さんのお指図で、北川さんが捜査に当っておられます。あなたのことは、なんのお指図もありませんから、お帰り下さい」
ピシャリと障子をしめてしまった。
三
青木は熱海をぶらぶらした。
記代子は熱海に通じていた。長平が上京のたび熱海に立ち寄る習慣で、迎える記代子や放二らと数日すごしたからである。
青木は記代子の案内で、いくらか熱海に通じた。
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