きいて廻ったのですけど」
 キッピイは、よそよそしく、
「私も知らないわ。それじゃア、四人とも、知らないのよ。たぶん、五人目をさがすといいわ」
 そう呟いて、
「帰ってよ」
 小犬を追い出すような、無情な様子で睨みつけた。

       八

 放二はアパートへ戻ってきても、まだ考えつづけていた。キッピイが記代子の行方を知っているのではあるまいか、と。
 彼女の態度は、放二が記代子をさがしている理由について、あまり無関心でありすぎるように見うけられる。それは失踪という事実を知っているためのように思われた。
 克子は放二の言葉を疑って、記代子の失踪をかぎあてたが、キッピイは放二の言葉を問題にしなかった。
 彼はキッピイの言葉を一つずつ思い起した。彼女はこんなことを言ったのだ。「五人目の女が知っているかも知れない」と。
 本当にそんな女がいるのだろうか? キッピイはその人を知っているのだろうか? 冗談めいたところもあった。
 まさか、礼子のことではないだろう。しかし?……放二は一山のマッチを思いだして、キッピイの五人目の女が礼子のことではないにしても、彼女も何か知っているかも知れないと思
前へ 次へ
全397ページ中181ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング