平は笑いだした。
「ずいぶん器用なことを命令したり、ひきうけたりするもんじゃないか」
放二も笑ったが、
「むしろ、いっと簡単なことなんです」
「ふ。君はそんな器用な特技があるのかい」
放二はそれには答えなかった。
「では、行って参ります」
「手がかりになりそうなものがあったら、明日、会社へ持ってらしてね。記代子さんが見つかるまでは、会社の仕事はよろしいのです。穂積さんに言ってありますから。記代子さんを探すのが、あなたのお仕事よ」
放二はうなずいて去った。
二
放二は記代子の部屋をさがした。
室内を一目見たとき、記代子の覚悟のようなものが感じられでハッとした。部屋がキレイに整頓されていたからである。
「イエ、私がお掃除しましたの」
と、下宿の人は、事もなげに云った。
「おでかけのあとは、毎日々々、それは大変な散らかしようですよ。おフトンだけは自分で押入へ投げこんでいらッしゃいますけどね。ホラ」
押入をあけてみせた。くずれて下へ落ちそうだ。よくたたみもせずに投げこんである。放二は自分の万年床を思いだして、男女の差の尺度はこの程度かと、おかしくなった。
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