。ぼくを締めださないのは」
「千円札のあるうちはね」
「そうだっけ。そんなこと、怒鳴ったのを覚えてら。どこかで、ひッぱたかれたッけ」
「そう。八重ちゃんにね」
「ちがう。オデン屋のオヤジだろう」
「八重ちゃんにもよ。覚えていないの?」
「どこで?」
「兄さんのお部屋でさ。私にお客があったから、八重ちゃんに世話してあげたら、お前なら百円札でタクサンだッて喚いたからさ」
「ひッぱたかれたのは、それだけかい」
「あんたが、ひッぱたいたわ」
「誰を?」
「兄さんを」
 青木は驚いてルミ子を見たが、とくに非難しているような顔付でもなかった。
「北川君をぶつなんて、妙だな。なぜ、ぶったろう?」
「酔っ払いだからさ」
「何か言ったかい? 女のことかなんか」
「あんた、なぜ、顔をあからめるの?」
「変な観察は、よせ」
「なぜさ。あんたぐらいの年になって、そんなことを言いながら顔をあからめるなんて、スッキリしてないね。救われないから」
「救われたかないんだから、いいやな」
「あんたのことじゃないのよ。救われない顔、見せられる方が因果だから。あんたぐらいの年配の人は、たのもしいような顔をするものさ。公衆衛
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