をさそったが、放二はそこからも身をひくようにして、青木と記代子二人だけで一しょに歩くのが自然になった。青木はつとめて放二を誘うようにしたが、記代子は放二を誘わなくなった。
暑気が加わってから、放二のからだは、めっきり衰えていた。二度、軽く血をはいたことがあったが、それを誰にも悟られぬようにしていた。
少年時代から病弱で、寝たり起きたりの生活はウンザリするほど重ねてきたが、養父母の仁愛ふかい看護の下で、彼が体得したことは忍耐であった。
あるとき、放二はオリムピック・マラソン選手の戦記をよんだ。彼らは時々ある地点に於ては、激痛のあまり知覚を失ってしまうのだ。手も足も動かなくなる。放置すれば、倒れる一瞬である。天水桶をみつけて、すがりつく。頭から、かぶっているのだ。又、歩きだす。知覚がもどり、彼は走りだしている。苦痛を超える、よろこび。坂がある。果して、駈けあがる力があるだろうか。疑いに負けてはならない。あらゆる苦痛をのりこして、走りつづけなければ勝つことができないのである。
一番健康な人のマラソンと、病人と、よく似ている、と放二は思った。マラソン選手は高熱のウワゴトの状態で走りつづ
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