つもの若い連中でなく、年配の長平たちだから、管理人も意外だったらしい。ジロジロと三人を眺めまわしたあげく、だまったまま、ふりむいて、ひッこんでしまった。
「あんなに言うことないね。このアパートにゃ、パンパンもいるんだ。みんな店をひらいてらアな」
「ぼくの部屋代が滞りがちだからです」
 と、放二は苦笑してオヤジにだけ聞えるように言ったが、耳の鋭い長平は、状況判断を加算して、ききとることができた。
 世間の激浪に損われた跡がミジンも見えない貴公子のようなこの青年に、彼の過去がすべてそうであったように、現在も冷酷無情な現実がヒシヒシとりまいていることを、はじめて長平は知ることができた。それを在るがまま受けいれて、彼の毅然たる魂は損われたことがないようだ。青年の後姿から光がさすようなのを長平は感じた。
 階段を上がると、女が一人、たたずんでいた。放二はそれを認めると、微笑して、
「ア。カズちゃん。ぼくの部屋に、ヤエちゃんのお客がいるの?」
「いいえ。とっくに、帰させました。兄さん。すみません」
 女は泣いているようだった。

       六

 部屋には二人の娘がいた。眼を泣きはらしている方
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