あの鬼神も、人間だった」
というおどろきの方が大きかったそうだ。
「なんしろ、お前、キンタマを小さくちぢめて腹の中へおさめてから、おもむろに立ち合いができたてえ人物だからな。竹矢来に手をかけたとたんに物の見事に五、六間も外の方へ跳びこしていたてえのだが、そこが深田とは因果の話じゃないか。しかし、なんだな。めっぽう強すぎても風情がない。房吉も斬り殺されて花を添えたというものだ。石に花を咲かせたな。ヤ、これもまた近来の佳話だわさ」
伴五郎らはこんなことをいって手向けの酒をのんだが、房吉の剣をなつかしみ、死をいたんで、角の師匠にたのみ、意気な流行歌に仕立ててもらって唄った。そしてこれが当時八百八町に大流行したということである。
底本:「坂口安吾全集 15」筑摩書房
1999(平成11)年10月20日初版第1刷発行
底本の親本:「週刊朝日別冊 第三号」
1954(昭和29)年8月10日発行
初出:「週刊朝日別冊 第三号」
1954(昭和29)年8月10日発行
入力:tatsuki
校正:小林繁雄
2006年9月22日作成
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