心で、驚くたびに顔色を変へるといふ人物でもあつたのである。幸ひ彼は桶屋の倅や百姓の二男坊や足軽の家などに生れずに、大将の家に生れて、始めからさういふ教育を受け、戦争を自主的に行ふ立場であつたから、兵卒なら発狂する線を踏み越えて意慾的な行動をすることができたのかも知れない。彼の足跡をつぶさにふりかへると、この想像も必ずしも奇矯ではないやうである。古狸よりは、むしろお人好しの然し図太いところもある平凡な偉人であつたやうだ。



底本:「坂口安吾全集 04」筑摩書房
   1998(平成10)年5月22日初版第1刷発行
底本の親本:「新世代 第二巻第一号」新世代社
   1947(昭和22)年1月1日発行
初出:「新世代 第二巻第一号」新世代社
   1947(昭和22)年1月1日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:小林繁雄
2006年12月30日作成
青空文庫作成ファイル:
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