特に作家においては、画家のデッサンにおける如く、論理の訓練が必要であるのに、近頃は一種反動的な傾向として、非論理によつて論理を圧倒しやうとする努力が横行し、通用しがちである。
 我々の理知的努力と訓練により、また人間性の深部に誠実な省察を行ふことにより、早晩我々の世界からかゝる動物的な非論理性を抹殺し、肉体的な論理によつて正当な論理を瞞着し圧倒することの内容の空虚を正確に認識しなければ、人間の真実の知的発展は行はれ得ない。
 過去において社会制度は幾度か変遷した。然し人間は殆ど変りはしなかつた。漸く変りかけてゐるのである。



底本:「坂口安吾全集 02」筑摩書房
   1999(平成11)年4月20日初版第1刷発行
底本の親本:「新潟新聞 第一九九六一号〈夕刊〉」
   1936(昭和11)年11月20日付(19日発行)
初出:「新潟新聞 第一九九六一号〈夕刊〉」
   1936(昭和11)年11月20日付(19日発行)
入力:tatsuki
校正:今井忠夫
2005年12月10日作成
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