ような無邪気な手紙は三四もらったことがありましたね。その論敵というのは、たいがい共産党で、共産党員の論敵をバクゲキするには私の巷談ぐらいで結構役に立つものらしいや。したがって私のところへは田舎の共産党文学青年から相当数の脅迫状じみたものが舞いこんでくる。彼らは私の説を受売りした論敵にバクゲキされたせいかも知れない。
 この手紙は私に多くのことを教えてくれた。東京周辺の居住者には、本当の田舎の生活は分らないものだ。
 都会の青年たちにはかなり強い反戦的気風を見ることができる。しかし、日本人の本心をたちわった場合、好戦論、反戦論、どっちの気風が多いかというと、私はむしろ好戦的気風の人間が多いと判断している。
 好戦的気風のよってきたるところは、今戦争がきてみやがれ、一もうけしてみせるぞ。この前の時はずるい奴に先を越されてもうけ損ったが、今度は要領を覚えたから、畜生メ、今度こそ日本一の成金になってみせらア。サアこい来たれと手ぐすねひいて戦争を待っていらせられるのが主である。
 金へん糸へんの現役は云うまでもない。追放の前将軍が戦争を待機するのも理のあるところで、フシギはないが坊主だの女給だの
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