らず、芸術に非ず、と断定した。そして今日に至っている。のみならず、今日に於ては、この教祖を邪教の教祖と見なしてすらいるのである。邪教といっても、教祖であるからには、立派な片言隻句も数多く残しているが、邪教であることには変りがない。
シュルレアリズムというのは、前大戦後にとびだした畸型児であるが、文学の方ではアンドレ・ブルトンなどが旗持ちで、彼はシュルレアリズムのマニフェスト(宣言)というものを書いている。大判の、ちょッと色の変った美本であった。茶の地に、美しいコバルトで題字がぬいてある。それが大そうキレイだったので、私たちの同人雑誌「青い馬」というのへ、そッくり衣裳を拝借したが、日本の印刷ではフランスのような美しいコバルトがでないので、あんまりパッとしなかった。しかし、拝借したのは装釘の衣裳だけでシュルレアリズムにかぶれていたわけではなかった。
このマニフェストというのはコケオドシの実にツマラヌものであった。彼の代表作には「ナッジャ」という小説があるが、これもツマラナイ小説である。恋人とアイビキに行く荒涼たる海岸の名をアンゴ ANGO という、それだけが私のハラワタにしみた全部であ
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