こやかに踊っているのは、充分に当り前のことである。
サッサッと、すべりも軽くすすむ。サッサッと。ヒラリ――どうも、こまった。私は誰かさんのように、逆上し、又、亢奮する筈がないのである。しかし、動くということは、いいもんだなア。サッサッと。ヒラリ。
美姫を選定するのに、顔だけを見て選ぶバカはないです。ジッと立ってるスタイルだけでもいかん。ミス・ニッポンを選ぶたって、歩かせる。歩かせるぐらいじゃ、いかん。ウ、あの女の子は、よく歩くなア。九十五点だ。なさけないなア。ミス・ニッポンの選び方というものは。
踊らせなければいかん。サササッと。ヒラリ。美の真価は、そのとき、男の目にしみわたるのである。
先月号に散々悪口を弄したけれども、ストリップ・ショオというものは因果物なのである。あそこでも見物人はジッと睨んでいる。東京パレスの男の子もジッと睨んでいるけれども、ここには持てる者の余裕があるね。持てる者はいいもんだなア。
ストリップの見物人は、持たざる者の悲しさを最も端的にあらわしている。息をこらし、眼は血走り、手を握ってギュッと拳をヒザに押しつけ、必死必殺、殺気がこもっているよ。そして、約三時間、女の子の裸の姿を睨みぬいたあげく、どうするかというと、椅子から立って振向いて、満員の同志をかきわけて、女の子のいる方の反対側の戸をあけて廊下を歩いて、ボンヤリ外へでるのである。なんたることだ。あんなにキチガイめいて女の子の裸体を睨んだあげく、彼は女の子にお尻を向けてポカンと反対側の戸外へでてボンノクボをさすって、アクビをしているのだ。持たざる者、難民の悲しき姿である。これを因果物というのである。
東京パレスに於ては、アベコベだ。彼らの睨みは全的であるけれども、福徳円満である。持てる者は、どうしても、そうなる。しかも彼の前にヒラヒラ、サササッ、ヒラリ、蝶かの如くに舞い踊るのはイヴニングの美姫である、射的屋の蔭から襲いかかってシャッポを強奪したり、ムンズと組みつく女レスラーのたぐいではない。
かの友人、ええと、誰かが何とか云ったッけ。ええと、その人が言ったように、よく揃えたもんだなア。まアね。彼の逆上的な観察にも狂いはあるようだが、まア、揃えるという精神はあるだろう。ダンサーたることを第一に、美というものを念頭においている方針の片鱗はわかるのである。たまたま目下予言者の宿命中
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