ナ、と私は考える。プログラムをとりだして、選手番号でしらべてみると、私は小便組を買っているが、毛布の選手を買っていないのである。シマッタと思う。
 ところが、レースがはじまってみると、案外なもので、小便が勝って、毛布はビリである。しかし最後に一挙抜くのだろうと見ていたが、いつまでたってもビリであった。この時ほど、競輪の悲哀を身にしみたことはなかった。

          ★

 三日間の戦跡を回顧すると、私が二日目に三千円の損失でくいとめたのは奇蹟であったということが分るのである。
 私は第一日目には、競輪といえばインチキ、八百長と見くびって、もっぱら大穴を狙い、本命や対抗を頭にした券を一度も買わなかった。そして、全部失敗したのである。
 結局十二レースのうち、十一レースまでは、本命か対抗がたいがい頭にはいって、これは先ず外れることが少い。
 当らないのは二着なのである。
 そこで二日目は本命、対抗、もしくは穴と思われる有望なのを頭において、二着を一から六まで全部買ってみることにした。つまり、本命が二番、対抗が五番、穴が六番、

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