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なども相当の人気がある。6に目をつけている人もかなりいるが、3の赤二郎は大穴狙いの商売人が買っているだけだ。3と同じように全然人の注意をひかないのは個人番号七の黒五郎だが、これはフォーカスとしては小林と組になっているから、一層問題にならない。
ところが一大混戦となり、小林は包まれて出られず、田川がトップをきっていたが、ゴール前の混戦に、アッというまに横からとびだした黒五郎が優勝してしまった。
「アッ。七番だ!」
しかし、次の瞬間に、
「ワッ。五―二。当った。当った」
と、どよめきが起る。本命の小林は負けたけれども、フォーカスで小林と組になっていた黒五郎が優勝したから、本命の五―二は動かなかったわけ。観衆の大多数は五―二を買っているから、当った、当った、と大よろこびで、本命の小林が負け、名もない黒五郎が勝ったことが、全然問題にならない。
競輪の観衆の大部分がフォーカスを専門に買い、単複はフォーカスの十分の一ぐらいしか売れないのが普通だから、フォーカスの本命がでれば、大多数は満足で、文句のでる余地はない。
人々は全然フォーカスに気をとられて忘れているが、黒五郎
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