、内山という名選手、当然優勝すべき本命選手が、車の接触か何かで反則し、除外されることによって起ったものだ。
これが八百長か、どうかは、私に判定のつくことではないが、すくなくとも、本命自身が反則を犯して除外される、というような場合には、観衆はこれを八百長と判断し易いのは当然なことで、なぜなら、大多数の正直な観衆は本命をタヨリに車券を買っており、そこに盲点のあろう筈はないから、ハッキリしている本命が反則したり負けたりすると、偶然の事故にしても、八百長と判じがちなのは自然の情であり、イキり立つのもムリがないのである。
しかし、本当の八百長は、観衆の盲点をついて、巧妙に行われているものだ。私の見たレースから二三の例をひいてお話してみよう。
次のようなレースがあるとする。人名は分り易く二人の有名選手の名をかりたが、この二人は八百長をやる人ではない。二千|米《メートル》。
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フォーカス番号 番号 姓名 人気
1 1 白太郎 入着ノ見込ミアリ
2 2 田川博一 対抗。アルイハ一着
3 3 赤二郎 マズ見込ナシ
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