しかし、好んで侵略される必要はない。左右両翼の対立などは、どっちが政権をとってもバカげたことになるだけのことで、我々の努力によって避けうるものは避けた方がよいにきまっている。
 しかし我々に防ぎようもない暴力的な侵略がはじまったら、これはもう無抵抗、無関心、お気に召すまま、知らぬ顔の半兵衛にかぎる。
 戦争などゝいうことが、つまらぬものであることはすでに利巧な人たちはみんな知っている筈であるし、やがてあらゆる指導者がそれを納得するのも遠いことではないだろう。
 かりに、世界中を征服してみたまえ。征服しただけ損したことが分ってくる。結局全部の面倒を見るか、手をひく以外に仕方がなかろう。その時になって光を放つのが、無抵抗、無関心ということだ。
 しかし、意識的な無抵抗主義に欠くべからざる一つのことは、国民全部が生活水準を高めるという唯一の目的を見失ってはいけないということだ。
 衣食住の水準のみでなく、文化水準を高めること、その唯一の目的のためにのみ我々の総力を集結するという課題さえ忘れなければ、どこの国が侵略してきて、婦人が強姦されて、男がいじめられ、こき使われても、我関せず、無抵抗。戦
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