を運んでリレーをしてからでないと、今もって日本の競技会はひらくことができないのである。海の彼方からは、赤旗の乱舞とスクラムとインターの合唱をやってみせないと気がすまないという宗教団体が船に乗って渡ってくる。
この競技会の主催者や日本海を渡ってくる宗教団体は、悪質な宗教中毒の親玉であり、ノリトやカシワデが国を亡したように、こんな宗教行事が国家的に行われるようになると国は又亡びる。国家的な集団発狂が近づいているのである。
美とは何ぞや、ということが分ると、精神病は相当抑えることができる。ノリトやカシワデや聖火リレーや天皇服やインターナショナルの合唱は、美ではないことが分るからである。しかし一方、狂人は自らの狂気を自覚しないところに致命的な欠点があるから、ここが非常にむつかしい。狂人には刃物を持たせないこと。最後にはこれだけしかない。権力とか毒薬とか刃物とかバクダンとか、すべて危険な物を持たせないことが、狂人を平和な隣人たらしめる唯一の方法なのである。
底本:「坂口安吾全集 08」筑摩書房
1998(平成10)年9月20日初版第1刷発行
底本の親本:「文藝春秋 第二八巻第一号」
1950(昭和25)年1月1日発行
初出:「文藝春秋 第二八巻第一号」
1950(昭和25)年1月1日発行
入力:tatsuki
校正:宮元淳一
2006年1月10日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全12ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング