物といえよう。自分の野心や抱負のために、かくも畏しく人情を押えることのできたハリスは、お吉や女色に対しても情を押え得た人物であったろうことは想像できるのである。ハリスは甚だ個性的な独特の冒険児であり紳士であった。唐人お吉の物語はハリスの側からも書かれる必要があるだろう。その方がむしろ文学的興味をそそるもののように私は考えている。
底本:「坂口安吾全集 14」筑摩書房
1999(平成11)年6月20日初版第1刷発行
底本の親本:「歌劇・黒船」
1954(昭和29)年5月27日発行
初出:「歌劇・黒船」
1954(昭和29)年5月27日発行
※初出の「歌劇・黒船」は、1954(昭和29)年5月27日から6月1日にかけて日比谷公会堂で上演された、日本楽劇協会第一〇回公演のパンフレットです。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:土井 亨
2006年7月11日作成
青空文庫作成ファイル:
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