ているというズボラなやり方、万事形だけですましている。
関西の雑誌や名鑑はこうではない。私の見たのは競輪ダービーという雑誌であるが、誤植などは殆ど見ることができないし、各人の実力の比較なども一応人が納得できるだけの資料と方法をつくしている。全国に支部があって、各地の競輪の着順やタイムのみではなく、レースの実際を各支部から報告させて表面の記録だけでは分らないことを載せている。そして月々の全国のレースの結果は殆ど全部あつめてある。これ以上のぞめない程度の実質の粋をほぼつくしている。レースは水ものだから、こうしても正確は期しがたいが、予想の資料としてはほゞ手のつくしうるところまでの努力をつくした感が多分である。
ここが大阪のよいところだ。実質的で、お体裁のところがない。ターミナルのバリケードや千日前の交通整理はお体裁というべきか軍隊調というべきか形式のみ甚だしいが、さすがに金モウケの一念こった競輪ともなれば、大阪人の実質精神は猛然として厳正をきわめるらしい。損をしても諦めやすい東京人とちがって、大阪人は競輪雑誌や名鑑を基に車券を買って損をした場合にはカンカンに立腹してネジこみもするかも知
前へ
次へ
全51ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング