阪」で見て二日目の紙面には、ダンスホールの経営者が軽犯罪法で大目玉をくったという記事がでていた。不敏の至りであるが、私はなぜ軽犯罪にひッかかるのだか合点がゆかなかったが、人に教えてもらってワケがわかった。つまりキンシ勲章はなくなったけれども、文官の勲章はまだ日本にあったんだね。なるほど、我々の老大家も文化勲章をもらった方がいるが、そういう新製品はとにかく勲何等というのはなくなったと思っていましたよ。古道具屋に山とつまれてホコリをかぶっているのだから、シルクハットかなんかかぶって宮城へでかけて、この勲章をもらって、女房よろこべ、感激してわが家へ立ち帰るような出来事がもう日本には行われていないと早呑みこみをしていたのは私一人ではなかったろう。
この勲章を拝受して女房よろこべとわが家へ立ちかえる行事が厳存している以上、これをダンスホールの主人がダンサーに授与しては、ちとグアイがわるいな。国家の栄誉の象徴をボートクしたということになるのだそうだが、どうもね、古道具屋にホコリをかぶっているのを起用して有効適切に女の子を奮起せしめたのだから、廃物利用としてはマンザラではないではないか。買って帰っ
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