なことなんだろうな。その日その日を一緒にホガラカに暮せる、それが紳士の才能でしょうから、つまり種則さんは紳士であり、ハンサムボーイというもんじゃないか。花の青春に、英文学などひもとかれるよりも、ハンサムボーイの心臓とキンミツにレンラクをとられる方が淑女の道だと思うんだがなア」
と、内々の胸のうちをクスグッテあげる。ヤス子には才媛の高風があり、文学を学んでおかしくない自然なところもあるけれども、美代子と文学は本来ツナガリがないのである。御当人も英文学をひもとくよりは映画見物が性に合っていることを御存知で、内々は学問に見切りをつけていらせられるのだが、私がこんな風にクスグッテあげると、忽ちツンとして、例のジロリをやる。
衣子がまた私にオカンムリのていで、
「三船さん、オセッカイはよして下さい。あなたはガサツすぎますよ。騒々しいのよ。よその家庭へガサツを持ちこんで、迷惑をお気づきになることも出来ないのね」
「これは失礼いたしました。然し、これは犬馬の労というものですよ。ガサツは生れつきだから仕方がないけど、マゴコロを買っていたゞかなくちゃア」
「マゴコロは押売りするものじゃありません」
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