る偏見に患わされている精神病者なのである。
理想と現実を混乱させてはいけない。理想というものは、最後のものだ。それは、わかりきっている。共産主義などゝいうものが、決して我々の最後の理想となりうる筈のものではない。理想は、簡単明快、きまりきっているではないか。世界単一国家、そして、各個人の不幸が最小限になるまで、その秩序が改良工夫された社会である。これはある点まで公式的に算出することが出来ても、万億の現実に突き当って改良工夫する以外に、最後の成果は望み得ない性質のものであろう。
資源豊かならざる小さな国土と多すぎる人口、この日本の現実を見るならば、日本の経済を安定せしめる方法は、ハッキリしている筈である。つまり、貿易である。搾取階級がなくなろうと、なくなるまいと、貿易に依存せずに、日本がどうなるものでもない。外貨を獲得することだ。貧弱な物資でヤリクリを上手に、合理化してもタカが知れており、共産主義だの経営の合理化だのとチャチなお題目や空念仏を唱えるよりも、ホテルをつくり、道路を良くし、外国から旅行客をつれこむ方が、どれぐらい実質的であるか分らない。その方が、はるかに日本の生活水準を高
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