ら、森川信一座が東京旗上げ興行で大阪から上京し、国際劇場へでた。私は彼がドサ廻りのころから好きで、この一座が上京すると、私は酒のほかに浅草の芸人と交渉がはじまるようになったが、然し、芝居を見たということは殆どない。
 泥酔のあげく酒をブラ下げて女優部屋へ遊びに行って、クダをまいたりするようなことは時々やらかしたが、ともかく、まア男優部屋へ遊びに行ったタメシがなかった、ということで純粋性を持続しているようなグアイであった。
 浅草の女優さん方は、まだ、芸が未熟である。女優部屋ではずいぶん色ッポイのだけれども、舞台へでると、色ッポクない。なかには全然色気がなくなり、棒のような感じのレビュウガールがいる。そのくせ一しょに酒の席にいる時にはずいぶん仇《あだ》めいており、楽屋の階段をシャンソンなんか唄いながらトントン駈け下りてくるだけでもナマメカシイのが舞台じゃ棒にすぎないのである。
 自分が女であることに頼りすぎて、舞台で、女になろうとする心構えがないからだ。女になろうとせず、元々女のつもりで、演技するから、女になろうとするオヤマのような色気がでないのである。
 だから私は浅草のレビューガール
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