落ちて汚いから、吊るわけに行かぬ。
机の四方に山とつまれたホゴや雑誌の下には、色々のものがある筈であるが、かき廻すと埃が立つから、さがされない。
掃除をすると色々の探し物がみつかって便利なのだが、整理に三日ぐらいはかゝり、それを人手に委せられない意味があるので、掃除もできないハメになっているのである。
一番こまるのは、人からの手紙で、そのうち返事をだそうと思って、身辺へ投げだしておくと、忽ち行方不明になって、返事がだせなくなってしまう。手紙を貰ってすぐ返事をかくことは却々できないものだから、どうしても行方不明になるわけで、だから又、この紙屑の下には、もうホゴとなった小切手や為替なども、かなり、まじっているのである。
底本:「坂口安吾全集 06」筑摩書房
1998(平成10)年7月20日初版第1刷発行
底本の親本:「マダム 第一巻第二号」
1948(昭和23)年3月1日発行
初出:「マダム 第一巻第二号」
1948(昭和23)年3月1日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
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