わが精神の周囲
坂口安吾

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)呉々《くれぐれ》も

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二十五|米《メートル》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)なして[#「なして」に傍点]
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     まえがき(小稿の主旨)

 私がアドルム中毒で病院を退院したのは、この四月二十日頃であったと記憶する。退院に際して担当の千谷さんから、秋までは仕事をしないように。転地してノンビリ遊んで暮しなさい、という忠告をうけた。私もなるべくこの忠告に従いたいと思ったが、私が鬱病の傾向を起したのは、昨年夏からのことで、それからズッと殆ど仕事をしていない。私は病気と闘った。旅行。覚醒剤。そして、睡るためのアドルム。
 昨年夏から、この春の入院まで、私が精神の衰弱と闘いながら書きつゞけたのは「にっぽん物語」又は「スキヤキから一つの歴史がはじまる」という妙な題で新潮に発表されたもの、並びに未発表の続稿、合せて千枚ちかいものがあるだけ。この未発表の部分は未定稿で、よほど手を入れなければ発表のできないものであった。しか
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