から、卵を一個よくかきまぜて、かける。再び蓋をして一二分放置しておいてから、食うのである。このへんはフグのオジヤの要領でやる。
 オカズはとらない。ただ、京都のギボシという店の昆布が好きで、それを少しずつオジヤにのッけて食べる習慣である。朝晩ともにそれだけである。
 酒の肴も全然食べない。ただ舐める程度のもの、あるいは小量のオシンコの如きものを肴にする程度。世にこの上の貧弱な酒の肴はない。
 ついでにパンの食べ方を申上げると、トーストにして、バタをぬり、(カラシは用いず)魚肉のサンドイッチにして食べる。魚肉はタラの子、イクラ、などもよいが、生鮭を焼いて、あついうちに醤油の中へ投げこむ。(この醤油はいっぺん煮てフットウしたのをさまして用いる)三日間ぐらい醤油づけにしたのを、とりだして、そのまま食う。これは新潟の郷土料理、主として子供の冬の弁当のオカズである。この鮭の肉をくずしてサンドイッチにして用いる。又ミソ漬けの魚がサンドイッチに適している。魚肉とバターが舌の上で混合する味がよろしいのである。然し要するに栄養は低いだろう。
 以上のほかには、バナナを一日に一本食うか食わずで(食べない日
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