だましたり裏切ったり、奇々怪々な友情だが、ともかく友情の血は通っていた。その友情も時代は理解することができなかったし、彼が光秀に殺されたのも時代にとって不可解であった。彼をめぐる全てが不可解のようなものだ。
 かれの強烈な個性は一見超人的であるが、実はマトモにすぎた凡人なのかも知れない。彼の一生にふくまれた人間史の綾や幅は比類なく雄大で正常である。
 私の狙いつつあるものが描けるかどうかは目下は雲をつかむようだ。ともかくタワケモノの少年と老いたる美濃のマムシとの交渉からポツポツ物語をはじめることに致します。



底本:「坂口安吾全集 13」筑摩書房
   1999(平成11)年2月20日初版第1刷発行
底本の親本:「新大阪 第二四一八号」
   1952(昭和27)年10月1日付(9月30日発行)
初出:「新大阪 第二四一八号」
   1952(昭和27)年10月1日付(9月30日発行)
入力:tatsuki
校正:砂場清隆
2009年10月27日作成
青空文庫作成ファイル:
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