“能筆ジム”
坂口安吾
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)独逸《ドイツ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)五十|弗《ドル》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ヘマ[#「ヘマ」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)なか/\
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雑誌「日本小説」に「不連続殺人事件」を連載し、探偵小説の鬼江戸川乱歩先生から過分なる賞讃をいたゞいて以来、僕は文壇随一の探偵小説通と自他ともに許す存在にまつりあげられてしまった。しかしまあ、余り通などとまつり上げられない方がいゝ。僕はおかげで「小説新潮」に「安吾捕物」まで書かされ、はてはA・クリスティの探偵小説を飜訳してくれないかなぞと喰さがる編集者も現れるという有様だ。ところで今日は少し眼先を変えて“能筆ジム”と呼ぶニセ札造りを御紹介しよう。
ニセ札造り“能筆ジム”は本名をエマニュエル・ニンゲルといゝ、アメリカの贋造紙幣史上では傑出したニセ札造りの一人で、十七年間も発見されなかったというその道の芸術家であった。発見されたときの次第は
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