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四時!
[#改丁]
序
本書の初めの諸版は、著者の名前なしでまず出版されたものであって、冒頭には次の数行しかついていなかった。
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本書の成立を会得するのに、二つのしかたがある。すなわち、黄ばんだ不揃いなひとたばの紙が実際あって、一人のみじめな男の最後の思想が、それに一つ一つ書き留められているのが見出されたのだと。あるいはまた、哲学者とか詩人とか、とにかく一人の者が、芸術のために自然を観察している夢想家があって、本書のなかにあるような観念を心にうかべ、それを取りあげて、というよりむしろそれに捉えられて、それからのがれる途はただ、それを一冊の書物として投げ出すよりほかはなかったのだと。
その二つの説明のうち、どちらなりと好きなほうを読者は選ぶがよい。
[#ここで字下げ終わり]
右のことでわかるとおり、本書が出版された当時、著者は自分のすべての考えをすぐに述べるのが適当だとは思わなかった。そして自分の考えが人に理解されるのを待つほうを好み、はたして理解されるかどうかを見るのを好んだ。ところが著者の考えは理解された。で今や著者は、文学という潔白清純な形式で普及させようとした自分の政治的思想や社会的思想を、あからさまに持ち出すことができる。そこで著者は言明する、というよりむしろ公然と告白する、『死刑囚最後の日』は、直接にかあるいは間接にかは問わずして、死刑の廃止についての弁論にほかならないと。著者が意図したところのものは、そして後世の人がかかる些事にも気を配ってくれることがあるとすれば、後世の人から作品のなかに見てとってもらいたいと著者が思ったところのものは、選ばれたる某罪人についての、特定の某被告についての、いつでも容易なそして一時的な特殊の弁護ではなくて、現在および未来のあらゆる被告についての、一般的なそして恒久的な弁論である。大いなる最高法院たる社会の前においてあらゆる人が陳述し弁護する、人間の権利に関する重大な一事である。すべての刑事訴訟より以前に永遠に打ち立てられている、最上の妨訴抗弁であり、血に対する嫌悪[#「血に対する嫌悪」に傍点]である。すべての重罪審の底で、法官らの血なまぐさい修辞学の熱弁の三重の厚みにおおわれながら、ひそかにうごめいているほの暗い避けがたい問題である、生と死との問題であり、なおあえ
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