た》は身をまもる板となる。
前夜のとおり人々の注意は、今や明るくなって見えてきた街路の先端に向けられた、というよりそこに倚《よ》りかかったと言ってもよい。
待つ間は長くなかった。どよめきの音がサン・ルーの方面にまたはっきり聞こえ始めた。しかしそれは第一回の攻撃のおりの運動とは異なっていた。鎖の音、大集団の恐ろしいざわめき、舗石の上に当たる青銅の音、一種のおごそかな響き、それらはあるすごい鉄器が近づいてくるのを示していた。多くの利害と思想とが交通するためにうがち設けられ、恐ろしい戦車を通すために作られたのではない、それらの平和な古い街路のうちに、一つの震動が起こってきた。
街路の先端に据えられてた戦士らの瞳《ひとみ》は、ものすごくなった。
一門の大砲が現われた。
砲手らが砲車を押し進めてきた。大砲は発射架の中に入れられていた。前車ははずされていた。砲手の二人は砲架をささえ、四人は車輪の所に添い、他の者らはあとに続いて弾薬車を引いていた。火のついた火繩《ひなわ》の煙が見えていた。
「打て!」とアンジョーラは叫んだ。
防寨《ぼうさい》は全部|火蓋《ひぶた》を切った。その射撃は猛烈
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