ジャンはまだ帰らないと答えさした。
 コゼットはそれ以上尋ねなかった。この世でなくてならないものは、ただマリユスばかりだったから。
 なお言っておくが、マリユスとコゼットの方でもまた不在になった。彼らはヴェルノンへ行った。マリユスはコゼットを父の墓へ連れて行った。
 マリユスはコゼットをしだいにジャン・ヴァルジャンからのがれさした。コゼットはされるままになっていた。
 それにまた、子供の忘恩などとある場合にはあまりきびしく言われてることも、実は人が考えるほど常にとがむべきことではない。それは自分自身の忘恩である。他の所で言っておいたように、自然は「前方を見て」いる。自然は生きてるものを、来る者と去る者とに分かっている。去る者は闇《やみ》の方へ向き、来る者は光明の方へ向いている。ここにおいてか乖離《かいり》が生じてきて、老いたる者にとっては宿命的なものとなり、若い者にとっては無意識的なものとなる。その乖離《かいり》は初めは感じ難いほどであるが、木の枝が分かれるようにしだいに大きくなる。小枝はなお幹についたまま遠ざかってゆく。それは小枝の罪ではない。青春は喜びのある所へ、にぎわいの方へ、強
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