務を、いかに人は忘れていることか!
 けれどもあえて言うが、マリユスを非難するのは不当であろう。
 マリユスは前に説明したとおり、結婚前にもフォーシュルヴァン氏に向かって問い糺《ただ》すことをせず、結婚後にもジャン・ヴァルジャンに向かって問い糺すことを恐れた。彼は心ならずも約束するに至ったことを後悔した。望みなきあの男にそれだけの譲歩をなしたのは誤りだったと、彼は幾度も自ら言った。そして今は、しだいにジャン・ヴァルジャンを家から遠ざけ、できるだけ彼をコゼットの頭から消してしまおうと、ただそれだけをはかっていた。コゼットとジャン・ヴァルジャンとの間にいつも多少自分をはさんで、彼女がもう彼のことを気づかず彼のことを頭に浮かべないようにと、願っていた。それは消し去ること以上で、蝕《しょく》し去ることであった。
 マリユスは必要であり正当であると判断したことを行なってるに過ぎなかった。彼は苛酷なこともせずしかも弱々しい情も動かさないでジャン・ヴァルジャンを排斥し去ろうとしていたが、それには、彼の考えによれば、読者が既に見てきたとおりの重大な理由があり、また次に述べる別の理由もあった。彼は自ら弁
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