ど彼女をまた取り戻したような心地になった。
「ありがとう、お父様。」とコゼットは言った。
 その感情の誘惑はジャン・ヴァルジャンにとって痛烈なものとなり始めた。彼は静かにコゼットの腕から身を退け、そして帽子を取り上げた。
「どうなさるの。」とコゼットは言った。
 ジャン・ヴァルジャンは答えた。
「奥さん、お別れします。皆様が待っていられましょうから。」
 そして扉《とびら》の閾《しきい》の上で彼は言い添えた。
「私はあなたにお前と言いました。しかしもうこれからそんなことはしないと御主人に申し上げて下さい。ごめん下さい。」
 ジャン・ヴァルジャンはコゼットをあとにして出て行った。コゼットはその謎《なぞ》のような別れの言葉に茫然《ぼうぜん》としてしまった。

     二 更に数歩の退却

 翌日、同じ時刻に、ジャン・ヴァルジャンはやってきた。
 コゼットはもう何にも尋ねもせず、不思議がりもせず、寒いとも言わず、客間のことも口に出さなかった。彼女はお父様ともまたはジャンさんとも言わなかった。そして自分はあなたと言われるままにしておいた。奥さんと言われるままにしておいた。ただ喜びの情が少し減
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