私の顔を少し見て下さいな。あなたは私どもといっしょに住むのをおきらいなさるのね。私の室をおきらいなさるのね。私あなたに何をしまして! 何をしましたでしょう。何かあるのでございましょう。」
「いや何にも。」
「それで?」
「いつもと少しも変わりはない。」
「ではなぜ名前をお変えなさるの。」
「あなたも変えている。」
彼はまた微笑をして言い添えた。
「あなたはポンメルシー夫人となっているし、私はジャンさんとなっても不思議ではない。」
「私にはわけがわかりませんわ。何だかばかげてるわ。あなたをジャンさんと言ってよいか夫《おっと》に聞いてみましょう。きっと許してはくれないでしょう。あなたはほんとに、大変私に心配をさせなさいますのね。いくら変わった癖があるからといって、この小さなコゼットを苦しめてはいけません。悪いことですわ。あなたは親切な方だから、意地悪をなすってはいけません。」
彼は答えなかった。
彼女は急に彼の両手を取り、拒む間を与えずそれを自分の顔の方へ持ち上げ、頤《あご》の下の首元に押しあてた。それは深い愛情を示す所作だった。
「どうか、」と彼女は言った、「親切にして下さいな。」
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