惨な帰着を蝋燭《ろうそく》で照らしていた門番だけが、問題の男の顔をながめたのであるが、その語るところはこれだけだった、「その人は恐ろしい姿だった。」
 マリユスは探査の助けにもと思って、祖父のもとへ運ばれてきた時身につけていた血に染んだ服をそのまま取って置かした。上衣を調べてみると、裾《すそ》が妙なふうに裂けていた。その一片がなくなっていた。
 ある晩マリユスは、その不思議なできごとや、試みてみた数限りない探査や、あらゆる努力が無効に終わったことなどを、コゼットとジャン・ヴァルジャンとの前で話した。ところが「フォーシュルヴァン氏」の冷淡な顔つきは彼をいら立たした。彼はほとんど憤怒の震えを帯びてる強い調子で叫んだ。
「そうです、その人はたといどんな人であったにせよ、崇高な人です。あなたはその人のしたことがわかりますか。その人は天使のようにやってきたのです。戦いの最中に飛び込んでき、私を奪い去り、下水道の蓋《ふた》をあけ、その中に私を引きずり込み、私をになって行かなければならなかったのです。恐ろしい地下の廊下を、頭をかがめ、身体を曲げ、暗黒の中を、汚水の中を、一里半以上も、背に一つの死骸《
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