の天井が星を隠していた。空には凄惨《せいさん》な気が深くよどんでいた。シテ島の人家にももう一点の光も見えなかった。通りかかる者もなかった。街路も川岸通りも、見える限り寂然《せきぜん》としていた。ノートル・ダームの堂宇と裁判所の塔とが、暗夜のひな形のように見えていた。一つの街灯の光が川岸縁を赤く染めていた。多くの橋の姿は、靄《もや》の中に相重なってぼかされていた。川の水は雨のために増していた。
読者の記憶するとおり、ジャヴェルがよりかかってるその場所は、ちょうどセーヌ川の急流の上であって、無限の螺旋《らせん》のように解けてはまた結ばるる恐るべき水の渦巻《うずま》きを眼下にしていた。
ジャヴェルは頭をかがめてながめ入った。すべてはまっくらで、何物も見分けられなかった。泡立《あわだ》つ激流の音は聞こえていたが、川の面は見えなかった。おりおり、目が眩《くら》むばかりのその深みの中に、一条の明るみが現われて茫漠《ぼうばく》たるうねりをなした。水には一種の力があって、最も深い闇夜のうちにも、どこからともなく光を取ってきてそれを蛇《へび》の形になすものである。が、再びその明るみも消え、すべてはま
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